NBJ(Nutrition Business Journal)の2024年レポートによれば、サプリメント大国アメリカでサプリメントを消費する人々はどの世代でも、健康寿命を脅かす心配事の1位は認知症だと回答しています。ベビーブーマー世代(60歳~80歳)も、X世代(45歳~59歳)も、ミレニアル世代(28歳~44歳)に至っても、心配事の1位は認知症だったのです。

認知機能の維持・向上をサポートするには、適切なサプリメントの摂取が重要です。なかでもテロメアは細胞の寿命に影響を与え、認知機能の低下を防ぐ役割があります。そのため、テロメアの健康を保つことは、認知機能の改善に繋がります。例えば、NMNやTA-65といったサプリメントは、テロメアの保護と延命に効果があり、認知機能の改善にも貢献するとされています。認知機能の向上とテロメアの健康を維持するために、適切なサプリメントを取り入れていきましょう。

テロメアについて

テロメアは、細胞の寿命や老化に密接に関与する重要な要素です。テロメアについてはすでに3回にわたって記事で扱ってきましたので、ここでは簡単に触れるにとどめます。

テロメアとは何か

テロメアは、染色体の末端に存在する重要な構造です。テロメアは、染色体の保護と細胞分裂の際の遺伝情報の維持に関与しています。これらは加齢やストレスにより短縮し、細胞老化や異常に繋がる可能性があります。例えば、慢性的なストレスを受けると、テロメアの短縮が促進され、細胞の早期老化を引き起こします。その結果、健康状態の悪化や疾患リスクが増すことがあります。

加齢や食事、日々のストレスなど、多くの要因がテロメアの短縮に影響を与えます。異なる研究結果や実験プログラムでは、テロメアの長さがどのように細胞の健康や寿命に影響を与えるかが発見されています。例えば、タウ蛋白アミロイドβなど、アルツハイマー病と関与するタンパク質の生成にもテロメアの長短が関係しているという研究があります。(※出典1)

テロメアは、染色体を保護し、細胞の健康を維持するために重要な役割を果たしています。細胞分裂の度にテロメアが少しずつ短縮されるため、寿命が尽きると細胞が正常に分裂できなくなります。それを抑制する方法が現在も研究されています。テロメアを適切に保護することは、老化の進行を遅らせ、認知機能や全体の健康状態を改善する可能性があるため、非常に重要なポイントです。

テロメアの短縮と認知機能低下の関係

テロメアの短縮は、認知機能の低下につながる可能性があります。テロメアは細胞分裂のたびに短くなりますが、この短縮が細胞の老化を引き起こし、結果的に脳機能の低下に影響を与える可能性が指摘されています。テロメアは染色体の末端に存在するDNAの繰り返し配列であり、細胞分裂の過程で徐々に短くなる特徴を持っています。そのため、テロメアが短くなると細胞の再生能力が低下し、老化が進行するのです。

細胞の老化が進むと、その影響は脳にも及びます。老化した脳細胞は神経伝達物質の生成や受容、信号伝達などの機能が低下し、これが認知機能の低下につながる一因と考えられています。実際に、研究によるとテロメアが著しく短縮された人々はアルツハイマー型認知症のリスクが高いことが示されています。さらに、テロメアの長さと認知機能のテスト結果との間に相関があることもわかっており、テロメアの短縮が認知機能低下に直接的な影響を与える可能性が高いと言えます。

テロメアの短縮が認知機能低下につながる可能性が高いため、テロメアの長さを維持することが重要です。そのためには、健康的な生活習慣を心がけることが推奨されます。適度な運動バランスの取れた食事ストレス管理などがテロメアの長さを維持し、脳の健康を保つために役立つとされています。また、特定のサプリメントや栄養素もテロメアの保護に寄与する可能性がありますので、適切な専門家の指導のもとでこれらを活用することも一つの方法です。

NMNサプリメントの役割とそのメカニズム

NMNサプリメントは、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)が体内でNAD+という補因子に変換されることで、NAD+レベルを安定させる役割が期待されています。NAD+は細胞のエネルギー生産とDNA修復に不可欠な役割を果たしているため、認知機能の改善や老化防止に寄与する可能性があります。

例えば哺乳類の実験では、NMNの補給によってNAD+レベルが安定し、老化プロセスが遅延または逆転することが示されています。特に、脳のエネルギー代謝の改善がアルツハイマー病の進行を予防するかどうかの実験では、認知機能に関わる脳の部分でのNMNの効果は顕著でした。(※出典2)

NMNの摂取は脳機能改善につながる?

NMNの摂取は高齢者のエネルギーレベルを向上させ、日常生活の質を高める可能性があります。NMN が人間の認知能力に与える影響を直接評価するいくつかの研究が進行中です。NMN は NAD+ レベルを上昇させることで神経機能を改善すると考えられていますが、その具体的な作用についてはまだ完全には解明されておらず、さらなる研究が必要です。

今のところNMNは、加齢に伴う代謝サポートを通じて認知機能の健康を維持するためのより広範な戦略の一部としての可能性を示しています。またNMNの摂取により、全体的な健康状態が向上するという期待も寄せられています。日々の栄養摂取にNMNを取り入れることは、長期的な脳の健康維持に効果的といえます。

CDPコリンの効果

CDPコリン(CDP-Choline)は、脳の健康と認知機能向上に大きく寄与するとされているサプリメントです。
CDPコリンは、脳内でアセチルコリンという神経伝達物質を生成するための材料となり、これが記憶や学習能力に不可欠な役割を果たします。また、神経細胞の保護や炎症の抑制にも寄与し、様々な実験や研究によってその効果が確認されています。

CDPコリンが脳機能に与える影響

CDPコリンは脳機能を向上させる可能性があります。これは、CDPコリンが神経伝達物質であるアセチルコリンの生成を促進し、神経シグナルの伝達をスムーズにするためです。具体的な例として、CDPコリンの摂取によって記憶力や集中力の向上が報告されている研究があります。ある研究では、CDPコリンがアルツハイマー型認知症の患者に対しても改善効果を示し、認知機能の低下を遅らせる可能性があることが示されています。また、健常な高齢者においても、CDPコリンを摂取することで日々の認知機能の維持及び向上が期待できるとされています。高齢化が進む現代社会において、CDPコリンの摂取は認知症予防や脳機能の維持に向けた重要なアプローチとなり得ます。(※出典3)

CDPコリンには副作用もなく、認知障害のある高齢者に対して短期的・中期的にはよい影響をもたらすことはわかっています。またアルツハイマー型認知病や血管性認知症の患者の認知機能と脳血流を改善する可能性があるという証拠もありますが、その有効性とメカニズムを解明するには、さらなる臨床試験が必要です。(※出典4)

まとめますと、日常的にCDPコリンを摂取することで、脳の健康を保ち、認知症の進行を抑える効果が期待されます。しかし個々の効果には個人差があるため、サプリメントの使用を考える際は医療専門家のアドバイスを受けることが重要です。もし治療中の場合は、必ず使用前に医師のアドバイスを受けてください。

 

TA-65サプリメントの特長

TA-65サプリメントは、健康と長寿を促進するために研究された特別なサプリメントとして注目を集めています。TA-65の具体的な特長についてもう一度、おおまかに解説します。
TA-65は、細胞のテロメアを保護し、加齢による細胞の劣化を抑制することが知られています。その結果、日々の生活における活力向上や認知機能の維持に寄与する可能性が高まります。さらに、研究により細胞寿命を延ばす効果が示され、高齢者の健康管理に役立つと期待されています。

TA-65とは何か

TA-65は、テロメアを長寿命化するために開発されたサプリメントです。テロメアは細胞の寿命を決定する重要な部分であり、細胞分裂の際に短縮されていきます。この短縮が進むと細胞の機能が低下し、最終的には細胞死が引き起こされます。つまり、テロメアを保護し延長することができれば、細胞の健康を維持し続けることが可能になります。

具体的には、TA-65はテロメラーゼという酵素を活性化させることで、テロメアの減少を防止します。テロメラーゼはテロメアの短縮を補修し、細胞の老化を遅らせる役割を持っています。したがって、TA-65の摂取により、この酵素を効果的に活性化することができ、細胞の寿命を延長させるのです。このメカニズムがTA-65のアンチエイジング効果の要因となっています。

TA-65はアンチエイジングや健康維持に有効なサプリメントと言えます。日々の生活において細胞の健康を維持するために、食事や運動と組み合わせて使用することで、より効果的な健康維持が期待されます。特に高齢者や加齢に伴う健康の低下を予防したい方々にとって、TA-65は非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

テロメラーゼが脳機能に及ぼす影響

テロメアを保護するテロメラーゼ酵素と脳機能には密接な関係があるとされ、多くの研究が行なわれています。
最近では、テロメラーゼの主要サブユニットの一つTERT(テロメラーゼ逆転写酵素)が脳ニューロンにおいて、毒性のある神経変性タンパク質の影響を打ち消すことが示されました。タンパク質分解プロセスは、さまざまな神経変性疾患の原因となるアミロイド β、病的タウ、α-シヌクレインなどの脳内の毒性タンパク質の分解に大きく関与しています。これらの新しい発見は、神経変性疾患の新たな治療戦略の開発に影響を与える可能性があります。(※出典5)

また動物モデルにおける研究ではありますが、テロメラーゼの活性化により記憶や学習能力の改善が観察されており、これは神経細胞の老化を遅らせる効果によると考えられています。特に、GRN510などのテロメラーゼ活性化物質がアルツハイマー病モデルで神経保護効果を発揮し、認知機能の低下を抑えることが示されています。(※出典6)

高齢になるにつれて脳の老化は避けられない課題となる中で、テロメアの延長は脳の老化を遅らせる重要な手段となる可能性があります。これにより、認知機能の維持や改善に貢献することが期待され、日常生活の質の向上へとつながるでしょう。

総括

認知機能に対する効果的なサプリメント戦略は、個々の成分がどのように脳機能に影響を与えるかを理解することから始まります。今回は認知に関する3つの代表的な成分を取り上げました。
NMN、CDPコリン、TA-65のサプリメントは、それぞれ異なるメカニズムでテロメアや認知機能に働きかけるため、適切な選択と組み合わせが求められます。
NMNはテロメラーゼ活性を促進し、細胞の寿命を延ばすことで認知機能の維持を支援します。CDPコリンはアセチルコリンの前駆体として、神経伝達物質の生成を促進し、認知機能を向上させる可能性があります。そしてTA-65はテロメアを保護し、老化による認知機能低下を防ぐ可能性があります。

これらのサプリメントを日常的に摂取する際は、自身の健康状態や目指す効果に合わせて、適切な製品を選びましょう。専門家の意見を参考にしながら、バランスの取れた食事と併用することで最大の効果が得られます。また、サプリメント摂取だけでなく、適度な運動や良質な睡眠を心がけることも重要です。

脳の健康を守るための一歩を踏み出し、質の高い生活を手に入れましょう。

認知機能のためのサプリメント研究は、日々進化しています。新しい成分や製品が市場に登場する可能性もあります。サプマートでは、最新の研究動向や製品情報を常にチェックして皆さまにお伝えしていくことで、皆さまの「健康寿命戦略」に貢献します。




※出典1:
Blanca Rodríguez-Fernández, Natalia Vilor-Tejedor, et al.(2022)
"Genetically predicted telomere length and Alzheimer’s disease endophenotypes: a Mendelian randomization study." in Alzheimer's Research & Therapy 14, Article number: 167 2022.
Diego A. Forero, et al. (2016)
"Meta-analysis of Telomere Length in Alzheimer’s Disease." The Journals of Gerontology: Series A, Volume 71, Issue 8, August 2016, Pages 1069-1073.

※出典2:
Xiaonan Wang, et al. (2016)
Nicotinamide mononucleotide protects against β-amyloid oligomer-induced cognitive impairment and neuronal death. Brain Res. 2016 Jul 15:1643:1-9. doi: 10.1016/j.brainres.2016.04.060. Epub 2016 Apr 26.

※出典3:
Cognitive Vitality Reports® in Alzheimer's Drug Discovery Foundation. Last updated on May 31,2017.

※出典4:
Fioravanti M, Yanagi M. (2005)
Cytidinediphosphocholine (CDP‐choline) for cognitive and behavioural disturbances associated with chronic cerebral disorders in the elderly. Cochrane Database of Systematic Reviews. Version published: 20 April 2005.

※出典5:
Gabriele Saretzki(2023)
The Telomerase Connection of the Brain and Its Implications for Neurodegenerative Diseases. Stem Cells, Volume 41, Issue 3, March 2023.

※出典6:
M. D. Anderson(2024)
Longevity Breakthrough: New Treatment Reverses Multiple Hallmarks of Aging. Cancer Center September 2, 2024.