カルシウム・パラドックス

ビタミンK2は、近年の研究により、その多岐にわたる健康効果が明らかになってきています。

ちなみにビタミンKには主にK1(フィロキノン)とK2(メナキノン)がありますが、K1の主な役割は血液凝固であり、カルシウム代謝ではありません。本編ではビタミンK2(メナキノン)について取り上げます。


骨粗しょう症や骨の健康を気にしてカルシウムを摂取する人は数多くいますが、ビタミンK2を一緒に摂取する人はほとんどいないでしょう。

カナダの自然医学の専門家ケイト・レアム-ブルーは、著書『ビタミンK2とカルシウムのパラドックス』(Vitamin K2 and the Calcium Paradox)で、カルシウムを摂取することで、動脈へのカルシウム沈着が心疾患を引き起こし、それが北米の男女の死亡原因の1位になっていると指摘します。さらに骨粗しょう症が身体障害と死亡の主な原因となっていることも指摘し、これを著者は「カルシウム・パラドックス」と呼んでいます。

なぜカルシウムを摂取しているのに、骨粗しょう症(カルシウム欠乏)と心疾患(カルシウム過多)が同時に起こるのでしょうか?

それを解決するのがビタミンK2と言われます。ビタミンK2は、カルシウムをあるべき場所に収めてくれる、有益な働きをしてくれるのです。

さらに著者によると、ビタミンK2不足と関連した疾患や健康状態として、以下を挙げています:

  • 骨粗しょう症
  • アテローム性動脈硬化
  • がんのリスク増加(乳がん、前立腺がん、肝臓がんなど)
  • 糖尿病
  • 静脈瘤
  • しわ
  • 虫歯
  • クローン病
  • 腎疾患


ビタミンK2はこれだけ重要な働きをしていながら、70年間も見過ごされてきた経緯があります。腸内の細菌がK2を合成するのですが、その合成量だけではとても賄えないことが明らかになったからです。ビタミンK1と違い、K2は体内で貯蔵も再生もされないため、食事やサプリメントからK2を摂取しなければならないということで、必須栄養素となったのです。

さらにビタミンK2の働きを詳しく見ていくことにしましょう。


骨の健康維持

ビタミンK2は、骨の健康において重要な役割を果たします。いくつかの試験や分析において、ビタミンK2の摂取は、脊椎骨折を60%、股関節骨折を77%、全ての非脊椎骨折を81%減少させることが示されました。 ​また高齢女性を対象とした3年間の研究では、ビタミンK2サプリメントを摂取したグループでは、年齢に伴う骨密度の低下が有意に遅いことが報告されています。

 

心血管の健康促進

ビタミンK2は、心血管系の健康維持にも寄与します。​7年から10年にわたる統計データによれば、ビタミンK2の摂取量が最も多い人々は、動脈石灰化のリスクが52%低く、心臓病による死亡リスクが57%低いことが示されています。​さらに、高用量のビタミンK2摂取は、冠状動脈性心疾患の発生率を低下させる可能性が示唆されています。 

 

がん予防効果

ビタミンK2には、特定のがんのリスクを低減する可能性があります。​11,000人の男性を対象とした観察研究では、高いビタミンK2摂取量が前立腺がんのリスクを63%低下させることが報告されています。

 

糖尿病予防への寄与

ビタミンK2は、糖尿病予防にも関与しています。​ビタミンK2の補給は、オステオカルシン代謝を介してインスリン感受性を改善し、2型糖尿病のリスクを低下させる可能性があります。

 

夜間のこむら返りの軽減

最新の研究で、ビタミンK2が夜間のこむら返りの頻度や強度を大幅に減少させる効果が確認されました。​65歳以上の高齢者199名を対象とした研究では、ビタミンK2を摂取したグループで、こむら返りの頻度が約3分の1に減少し、持続時間や痛みの強度も大幅に低下したと報告されています。

 

抗酸化作用と細胞保護

ビタミンK2には、抗酸化作用と細胞保護効果があることが新たに発見されました。​東北大学の研究により、ビタミンKがフェロトーシス(脂質酸化細胞死)を強力に防ぐ作用があることが明らかになりました。​還元型のビタミンKが抗酸化物質として働き、脂質の酸化を抑えることでフェロトーシスを抑制することが示されています。

 

テストステロンの維持

ビタミンK2がテストステロンのレベルを高める可能性については、いくつかの研究が示唆しています。​ビタミンK2はテストステロンの生成をサポートし、ホルモンバランス全体に深く関与していると考えられています。

​マグネシウム、ビタミンD、ビタミンK2などの栄養素は、テストステロンの産生をサポートするだけでなく、免疫力やエネルギー代謝の向上にも寄与します。 

ただし、これらの研究は主に動物実験や限定的なものであり、ビタミンK2のテストステロンレベルへの影響については、さらなる詳細な研究が必要とされています。

 

より重要なのはMK7

​ビタミンK2には、鎖の長さの異なる複数のメナキノン(MK)同族体が存在し、その中でもMK4(メナキノン4)とMK7(メナキノン7)は特に注目されています。​最新の研究により、MK7がより重要とされる理由が明らかになってきました。

MK7は、納豆などの発酵食品に多く含まれています。​一方、MK4は鶏肉や卵黄に含まれますが、総ビタミンK摂取に占める割合は約2.5%と低いことが報告されています。​これに対し、発酵食品に含まれるMK5からMK9までのメナキノン類の総和は約7.5%を占めています。 ​

MK7の長い血中半減期により、体内での持続的な生理活性が期待できます。これにより、骨や血管の健康維持において、MK7がより効果的である可能性が示唆されています。

これらの点から、MK7はMK4よりも体内での持続的な効果が期待でき、特に骨や心血管の健康維持において重要性が高いと考えられています。

 

ビタミンK2は骨や心血管の健康維持、がんや糖尿病の予防、抗酸化作用による細胞保護、そして夜間のこむら返りの軽減など、多岐にわたる健康効果を持つことが示されています。​ただし、個人差や既存の健康状態によって効果が異なる場合があるため、サプリメントの摂取を検討する際は、医師や専門家に相談することが重要です。


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