あなたの「老い方」は、 遺伝子より環境が決めている
Health & Longevity Column
あなたの「老い方」は、
遺伝子より環境が決めている
「長寿かどうかは、親から受け継いだ遺伝子で決まる」——そう思っている方は少なくないでしょう。たしかに、家系や体質は老化に影響します。しかし近年の研究は、それとは少し異なることを示しています。
老化の速さを左右するのは、遺伝子よりも「毎日の環境」である。
これが、世界各地の研究者たちが少しずつ明らかにしてきた、新しい老化の常識です。
遺伝子の影響は、思ったより小さかった
イギリスの全国規模の医療研究データ(UK Biobank)を使った研究で、「遺伝」と「環境」がそれぞれ老化にどれほど影響するかを詳しく調べたものがあります(Nature Medicine、2025年)。
その結果は、研究者たちにとっても驚くべきものでした。
心臓病や肺の病気、肝臓の病気については、環境要因が病気の発症の差異の5〜50%近くを占めていたといいます。「病気になりやすいかどうか」は、体質よりも暮らし方や住む環境に、より大きく左右されているのです。
「生物学的な年齢」とはどういうことか
年齢には、戸籍上の年齢(暦年齢)と、体の内側の状態を表す「生物学的年齢」があります。
最近の研究では、DNAメチル化(遺伝子のスイッチを入れたり切ったりする仕組み)や、体内のタンパク質の変化パターンを調べることで、その人の体が実際にどれくらいの速さで老いているかを測ることができるようになりました。
興味深いのは、同じ60歳でも、環境への曝露歴によって、この「体の年齢」が10〜15歳も異なることがある、という点です。暦の上では同い年でも、体の中では大きく差がついていることがあるわけです。
日常のなかに潜む、老化を早めるもの
では、老化を早める「環境要因」(環境中の有害物質にさらされること;Environmental Exposures)とは何でしょうか。研究が注目するのは、主に次のようなものです。
いずれも「すぐに病気になる」というほどの急性の毒性はありませんが、長年にわたって少しずつ積み重なることで、体の老化時計を早めてしまうと考えられています。
「変えられないもの」より「変えられるもの」に目を向ける
この研究が伝えるもっとも大切なメッセージは、「老い方は、ある程度自分でコントロールできる」という希望です。遺伝子は変えられませんが、環境は変えることができます。
どれも、特別な努力や大きな出費が必要なものではありません。日々の小さな選択の積み重ねが、体の内側からの老化の速度を変えていく可能性があるのです。
おわりに
研究が示すのは、「どのような環境の中で、何を食べ、何を吸い、どう動いてきたか」が、老化を語る上でずっと重要だということです。
年齢を重ねることは避けられませんが、その「重ね方」は、意外なほど自分の手の中にあるのかもしれません。
