新しいダイエット素材として注目を集める『アフリカンマンゴー』
食用や薬草などとしてアフリカで大変親しまれ、肥満や糖尿病の改善、さらにはダイエット素材としても高い評価を得ているアフリカンマンゴーについて、掘り下げていきたいと思います。

 アフリカンマンゴーとは

アフリカンマンゴー(Irvingia gabonensis)は、高さ10~40mにまで育つニガキ科の常緑高木です。成木になってから10~15年ほどで花を付け、その名のとおり黄色から緑味がかったマンゴーのような果実を実らせます。
ギニア、カメルーン、中央アフリカ、ガボン、コンゴ、アンゴラなど西~中央アフリカやインドの熱帯雨林の低地に自生し、アフリカンワイルドマンゴー、アーヴィンジア、ディカナッツ、スウィートブッシュマンゴーなど、様々な名前で親しまれている植物です。

近年アメリカの研究者によって、アフリカンマンゴーの種子から抽出したエキスが血圧の低下やコレステロールの減少、肥満解消に役立つと発表されたことから「新しいダイエット素材」として脚光を浴びることに。さらに、アメリカで人気のOprah WinferyのTV番組 “Oprah(オプラ)” で、医師Oz(オズ)がダイエットに有効な働きがある素材として紹介したことによりさらに認知度が高まり、広く知られるようになりました。


 アフリカンマンゴーの用途

アフリカの原産地域では、アフリカンマンゴーは食用や薬草として、また食品原料などとしてあらゆる部位が使用されていて、大変利用価値の高い植物として知られています。

○果実
ビタミンCやカルシウムを豊富に含む果実は、デザートやスナック、ジャム、ゼリー、ジュースなどとして利用されています。また、家畜(ブタ)の飼料としても利用されることがあるようです。
近年、アフリカンマンゴーの果実から質の良いワイン(Alc.8.12%)が生産できることが示され、先に野生植物から作られたアルコール飲料として成功を収める “Amarula(アマルーラ)” のような利用可能性が注目されています。アフリカに根ざしたユニークな製品として展開される日も近いかもしれません。
(Plant Foods for Human Nutrition 1996 Apr;49(3):213-9. PMID: 8865330)

○種子
種子は油脂、炭水化物、タンパク質を含む重要な素材として位置付けられています。
アフリカンマンゴーの種子をすり鉢や石ですり潰してペーストまたは固形にしたものは “Dika brea(ディカブレッド)” と呼ばれ、料理の風味やコクを出すスパイスとしてスープやシチュー、ソースなどに使用されています。
また、油糧種子に分類されるほど油脂を多く含むため、バターや食用油として利用されるほか、石けんや化粧品、薬品に応用されています。さらに、工業用ゴムとしての活用も示されています。

○葉、樹皮
下痢の治療や授乳期間の短縮を目的に、アフリカンマンゴーの樹皮をパーム油と混ぜたものを内服することがあります。
また、シエラレオネのメンデ族は、樹皮を水と混ぜてペースト状にしたものを皮膚に塗布して痛み止めとして利用します。他にも、痛み止めとして内服する地域もあるようです。
枝は「チューイングスティック」として、歯ブラシの代わりに活用されています。
(State of the Knowledge. Technical Paper No. 122 May 2004)
(Jounal of Ethnopharmacol. 1995 Feb;45(2):125-9. PMID: 7776661)


 アフリカンマンゴーの種子の栄養

油脂の他、種子は18種類のアミノ酸やカルシウム、ナトリウム、リン、鉄などのミネラルも含んでいます。

【種子(生)の一般成分含有比(%)】
水分 11.9
脂質 51.32
炭水化物 26.02
灰分 2.46
粗タンパク質 7.42
粗食物繊維 0.86
ビタミンC(mg/100g) 9.24
ビタミンA(mg/100g) 0.63

【種子(生)のアミノ酸組成(g/16gN)】
ロイシン 7.6
イソロイシン 3.2
メチオニン 1.3
スレオニン 1.3
トリプトファン 1.5
バリン 3.0
フェニルアラニン 2.1
ヒスチジン 1.7
リジン 1.7
アスパラギン酸 5.8
システイン 4.8
セリン 2.2
グルタミン酸 3.1
プロリン 13.4
グリシン 2.4
アラニン 3.9
チロシン 3.2
アルギニン 1.5

【種子の脂肪酸組成(%)】
ミリスチン酸 1.0
パルミチン酸 14.6
パルミトレイン酸 5.5
ステアリン酸 8.6
オレイン酸 20.5
リノール酸 21.5
α-リノレン酸 21.3
ガドレイン酸 1.3
その他 5.7

種子の脂肪酸組成はサンプルによって若干の差異がありますが、ミリスチン酸の含有量に比例して、血中のHDL濃度が増加するという興味深い動物実験結果も報告されています。

(AJFAND Volume.7 No.1 2007)
(State of the Knowledge. Technical Paper No. 122 May 2004)
(Lipids Health Dis. 2011 Mar 4;10:43.)


 アフリカンマンゴーについての研究

上述のように、アフリカではさまざまな形で利用され親しまれているアフリカンマンゴーですが、実際にさまざまな部位を使用しての科学的研究も進められてきています。

○肥満:種子
アメリカでダイエット素材として注目されているアフリカンマンゴーですが、実際に種子から抽出したエキス(IGOB131またはOB131)を使用した研究によりその働きは確認されています。

    • ブドウ糖を脂肪に変え、蓄積する際に関与するグリセロール-3-リン酸脱水素酵素を阻害。
    • 脂肪細胞の分化、インスリン感受性などに関与する、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)の抑制により、脂質の生合成を抑制。
    • 脂肪細胞から分泌されるホルモン「アディポネクチン」の発現を高め、インスリン感受性と血管内皮機能を向上。
    • “レプチン”の発現を減少させ、レプチン感受性を高めることによる食欲抑制と熱産生の向上。
      102人の過体重者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験では、アフリカンマンゴーの種子エキスを摂取したグループ(1日2回10週間、1回150mg)は「体重やコレステロール値などの肥満に関係する項目」において、非摂取グループよりもはるかに改善が見られたことから、有効性があるとの結果が発表されています。

      <実験結果>
平均体重(kg) 摂取前 摂取(10週間)後
非摂取群 96.4kg 95.7kg
摂取群 97.9kg 85.1kg
総コレステロール値(mg/dL) 摂取前 摂取(10週間)後
非摂取群 145.2mg/dl 142.4mg/dl
摂取群 151.7mg/dl 111.9mg/dl

      胴囲、体脂肪率、LDLコレステロール値、総コレステロール値、C-反応性タンパク、アディポネクチン、レプチンのいずれの項目においても、摂取グループには大きな改善が見られました。また、40人の肥満患者を対象に行われた臨床試験においても、同様の働きが確認されています。
      さらに、2型糖尿病患者に4週間摂取させた試験でも、血糖値の改善、糖尿病時に低下する赤血球膜ATPアーゼ(ATPase)活性の正常化に加え、コレステロール値の改善が認められています。
      (Lipids in Health and Disease. 2009, 8:7)
      (Lipids in Health and Disease 2008,7:44)
      (Lipids in Health and Disease. 2005,4:12)
      (Lipids in Health and Disease 2011,10:43)
      (Enzyme . 1986;36(3):212-215.)
      (West African Journal of Medicine. 1990;9(2):108-115.)


○鎮痛:樹皮
      シエラレオネのメンデ族は、アフリカンマンゴーの樹皮を、鎮痛薬として使用しています。
      アフリカンマンゴーの民間療法の効果についても薬理学的な検証が行なわれ、樹皮の水溶性エキストラクトは麻薬性鎮痛薬と、エタノールエキストラクトは非麻薬性鎮痛薬と類似した作用機序で鎮痛効果をもつことが確認されています。
      (Journal of Ethnopharmacol. 1995 Feb;45(2):125-9.)


○抗微生物活性:葉、樹皮、根
      アフリカンマンゴーの葉、樹皮、及び根は、微生物付着の抑制や酵素、細胞膜輸送タンパクを不活性化させるなど、細菌や真菌に対する抗菌作用が確認されています。
      これは、含有されるテルペノイドや、エラグ酸様物質等による抗菌作用と考えられています。
      (Journal of Ethnopharmacol. 2007 Oct 8;114(1):54-60.)
      (African Journal of Medicine & Medical Sciences. 2008 Jun;37(2):119-24.)


○胃腸保護作用:葉
      アフリカンマンゴーの葉エキストラクトには、胃腸運動を抑え、胃腸を保護する働きが期待できるとされています。
      (The Journal of Experimental Biology. 2004 Aug;42(8):787-91.PMID15573528)

 まとめ

      1株あれば、日陰になり食料になり、1つの家族が支えられるというほどアフリカで役立てられ、親しまれている樹木、アフリカンマンゴー。
      その健康に対する働きの解明はまだ始まったばかりですが、数少ないながらも確かなエビデンスにより、アメリカのダイエット市場では今急速にアフリカンマンゴーのサプリメントが販売量を伸ばしています。
      食品としての使用歴も長く、安心して使えるダイエット素材といえるかもしれません。
      ダイエットサポートアイテムとして有効に活用し、健康に役立てたいものですね。